2009年11月9日月曜日

事業仕分けと経営再建

事業仕分けで,文部科学省の「子どもの読書活動推進事業」(2億1200万円)と子どもの体験活動や読書活動の振興を図る「子どもゆめ基金」(21億4400万円)が「廃止」の判断(最終確定ではない)となりました。蓮舫議員は,“(国民に)納得していただける説明がいまひとつ足りなかったようには思います”とのコメントでした。

“無駄を洗い出す”と説明される「事業仕分け」。テレビ番組では,「日本の無駄を洗い出す“仕分け人”」という肩書きを誇らしげにする方までいらっしゃるようです・・。

事業仕分けは民間における企業再建の手法がカスタマイズされて政府に導入されたものと推測されます。

業績が厳しい企業では,どこまで手元の資金がもつかが非常に重要になってきます。そこで経営の専門家たちは,手元の資金を飛行機の燃料に例えて,“資金燃料”や“現金燃料”と呼んだりします。(資金が減っていく割合を“資金燃料率”あるいは“現金燃料率”と呼びます)

現在,私は副業で経営コンサルタントをしていますが,たとえば不振企業に入るとすぐに,現在のままだとあと何ヶ月その企業がもつか,あるいは何ヶ月先に資金燃料切れで墜落(破綻)することになるかを計算するわけです。

業績が厳しいわけですから,墜落する前に新しい利益を創出する何らかの「打ち手」(例えば新商品の開発と市場への投入)を打たないといけません。ただ,打ち手を施しても効果が現れるまでに,ある程度の時間がかかりますから,その前に墜落してしまうリスクもあります。だから,一刻も早く「出血(赤字)を止めなければならない」のです。

そこで,企業が注力している各事業の中で,将来性のないと思われるもの(ノン・コア事業)は撤退することになります。もちろん,事業の撤退には高度な経営判断が必要になりますし,何度も現場に赴いて,状況をひとつずつ確かめていく作業が必要になります。

おそらく,これが政府でいう事業仕分け(の廃止)にあたります。

では,どの事業を撤退するのかということについては,いろいろな決め方がありますが,有名なところではSWOT分析などを使います。もちろん,SWOT分析は入り口で,それ以上の細かい分析をしていくことになります。

また,先ほど「打ち手」と書きましたが,悪性の赤字は止めないといけませんが,良性の赤字(将来への打ち手)は容認(投資)しないといけません。

何かを捨てるということは何かを選ぶということで,事業撤退を検討する際は,「どれをコア事業として残すのか(どこに投資をするか)」が非常に重要になります。

経営者は「どの事業に注力するか」ということで頭の中がいっぱいになります。

従って,経営経験が豊富な人が仕分け人になったら,“無駄を洗い出す”ではなく,“注力すべき事業を選ぶ”「事業仕分け」と自然に説明するようになるはずです。おそらく,「どの事業に注力するか」はマニフェストに記述されており,「悪性の出血を止める」のが事業仕分けということなのだとは思うのですが。

用意した資料に基づいた官僚の説明(説明が下手だったらどうするのでしょう)から,1時間程度の議論で,しかも多数決で決めてしまうのは,それが仮に正しい判断だったとしても,経営経験を持つ人間からするとどうもしっくりこない話です。。

悪性の赤字を一刻も早く止めなくてはならないのは間違いないのですが,誤った意志決定だけはしないで欲しいと心から思います。

“数多くの意思決定を手早く行うことは,間違いである”(ドラッカー)